徒花
「……私、どうすればいいの……」

「何が?」

「……子供とか考えたこともなかったし、それにいきなりこんなことになったって、私は……」

「落ち付けっつってんだろ!」


コウに一喝され、私はびくりと肩を上げた。

コウは舌打ち混じりに「ごめん」と言いながら、



「生理、どれくらい来てねぇの?」

「……10日くらい、だけど」


言葉にすればするほど、確信に変わっていきそうで怖かった。

それでも私は、そうでない方の可能性を求めてしまって、



「でもさ、どうせ遅れてるだけだろうし……」

「わかんねぇだろ、そんなこと」

「それはそうだけど……」

「だったらまずは確認するしかねぇよ。話はそれからだ」


コウは席を立つ。



「……どこ行くの?」

「お前は寝てろ。薬局行くだけだから。検査薬買ってくる」

「やだ! ダメ!」


私は慌ててコウを制した。

コウは怪訝な顔で「何でだよ!」と苛立ったように言う。



「どっちかわかんねぇのにこんな話してる意味ねぇだろ! そうだったとしても、そうじゃなかったとしても、確かめなきゃ始まらねぇよ!」

「でももしそれでほんとに子供ができてたらどうするの?!」


泣き叫ぶような声が出た。



「できてたら、できてた時の話をするだけだ」


何で突き放すような言い方するの? 

私がこんなに不安に思ってるのに、男のコウはそれを気にしてはくれないの?


けれど、結局、コウは私を振り切って出て行った。

< 229 / 286 >

この作品をシェア

pagetop