徒花
何度も、何度も、角度を変えて、私の口内をまさぐる舌。

呼吸をするのもやっとで、私は苦しくなって、助けを求めるように、コウの体に腕をまわした。


でも、その所為で、余計にくちづけは深くなる。



「少しは抵抗する素振りくらい見せなきゃ、ほんとに狼に喰われるぞ?」

「あっ」

「なんて、ほんとは俺も喋ってられるほど余裕ねぇんだけど」


首筋に落ちてきた唇。

コウのあつい息が掛かる。


柔肌を、辿るようになぞって触れる、コウの指。



「すげぇ好き」


吐息混じりの声が、耳をくすぐって。


思考なんてものはとっくにとろけきっていて、本能的に、私はコウを求めてた。

指が、声が、目が、私を犯す。



「マリア」


苦しそうに、余裕なく私の名前を呼びながら。


そんなコウを、私はひどく愛おしく思った。

私だけのものにしてしまいたいと、なぜだか強く思った。



「コウ」


その名を呼んだら、もっと、もっと、欲しくなった。

結局は、男と女でしかない私たち。


その、熱っぽい瞳に囚われて、堕ちていく。



私は悲鳴にも似た嬌声を漏らしながら、コウの背中に爪痕を残した。

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