徒花
ちゃんとした儀式でもないのに、緊張してどもってしまった私を笑ったダボくんは、



「あのさ、そう固くならないで聞いてほしいんだけど」

「うん?」

「コウって、わかってると思うけど、ほんとろくでなしなんだよ。どうしようもないっていうか」

「うん」

「でも、そんなコウが、本当に未来を考えた相手はマリアちゃんだけだよ。だから、感謝してるんだ、俺」

「……『感謝』?」

「このまま行ったら破滅の道だと思ってたコウを好きになってくれて、変えてくれて、ありがとう。コウにはマリアちゃんがいれば大丈夫」

「………」

「だから、これからもコウを見捨てないでやってほしい。どんな時でも、傍にいてやってよ」

「もちろん」

「誓える?」

「誓うよ」


ダボくんはまた満足そうに笑った。

そして両手を広げ、



「じゃあ、ふたりの結婚を認めます。最後に誓いのキスを」


ほんとにするの?

と、思ったけれど、肩をすくめたコウは言われた通りに私へと向き直る。



「何かさぁ、俺ら、色々と順番がめちゃくちゃになったけど、それはこの際、置いとくとして、えっと」


言葉が見つからないのか、コウは一瞬、考えるように宙を仰いだが、また私を見て、



「愛してる」

「私も愛してるよ」


シンプルだなだけの言葉の後、私たちはくちづけを交わす。

恥ずかしさから、私たちはどちらからともなく笑った。


ダボくんは爆笑だった。
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