徒花
「なぁ、写真撮ろうぜ、写真!」


ダボくんはどこからともなくデジカメを取り出した。



「はぁ? 嫌だよ」

「何でだよ」

「お前、それ焼き増しして街中でばら撒こうって魂胆なの、わかってんだぞ!」

「疑り深いよ、コウ。いくら俺でも、ばら撒こうとは思ってないさ。まぁ、焼き増ししまくろうとは思ってるけど」

「ほら、やっぱり悪用しようと思ってんじゃねぇか!」


急に子供みたいなことを言い合い、ふたりはチャペルの中を追い掛け回る。

本当に、困ったやつらだ。



「いいじゃないの、写真くらい。思い出にもなるし」


私が言った瞬間、ふたりは足を止めた。

不貞腐れた顔をするコウと、にんまり顔になるダボくん。



「コウ。マリアちゃんもこう言ってるんだし」

「うるせぇなぁ。わかったよ」


舌打ち混じりのコウに、ダボくんは、



「コウってマリアちゃんの言うことには素直に従うんだね。猛獣使いっていうか、尻に敷かれててウケる!」

「笑うな! 死ね!」


吐き捨てながらも、コウはしぶしぶといった感じで私の隣に立った。

そして私の肩を抱き、



「腕の見せどころだぞ、カメラマン。写真のタイトルは“世界で一番幸せなふたり”だ」

「了解」


笑う私。

中指を立てて舌を出すコウ。


ダボくんは「いくよー」と言って、シャッターを切った。

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