徒花
「色々考えたよ、俺も。でも、俺はただの外野だし、自分のことじゃねぇし。そう思ったらさ、何かもう、認めるとか認めないとかどうでもよくなってきて」


ユキチくんは肩をすくめて見せた。



「コウは昔から、周りに反対されればされるほど意固地になるし、どうせ今回だってそうなんだろうとは思ってたけど」

「………」

「でもまぁ、意固地になったって上手くいかねぇよ。それでも上手くいってるってことは、“本物”なんだろうな。って、ダボにも諭されたし」

「………」

「俺だけが認めてないなんて、俺の方こそ意固地になってるみてぇじゃん? と、これもダボに言われたんだけど。でも実際、その通りだと思ってさ」

「………」

「したら、コウの恋愛のことで何で俺がここまで悩んでんだよ、って自分にイラついてきて。そして気付けば一ヶ月が過ぎてたわけだ」


身振り手振りで、ユキチくんは大袈裟に話す。

ユキチくんは、「でも」と言って、身を乗り出した。



「でもな、この一ヶ月間、何もしてなかったわけじゃねぇよ。そりゃもう、忙しく動き回ってたよ、俺は。軽く地球3周分はしたんじゃね?」

「………」

「って、ここ突っ込むとこだから! そんなわけねぇだろ、って突っ込めよ!」


忙しい人だ。

あまりのテンションの違いについていけない。


コウは無視して「それで?」と問う。



「さっさとそのうぜぇ自分語りを続けろよ」

「はぁ?」

「こっちはてめぇが行方不明になったって聞いて心配してたのに、『悩んでた』とか言われて、挙句『地球3周分はした』とか、ふざけんなっつーの」

「………」

「ダボもダボだよ。あいつ、ユキチと連絡取れなくなったとか言いながら、実は裏で繋がってたんじゃねぇかよ。また騙されたぜ」

「いや、それは俺が『そう言ってくれ』って頼んだんだよ。ダボは悪くねぇ」

「そんなの俺から見ればどっちも同じだろ。ふたりして、陰でこそこそしやがって。まさか何か企んでんじゃねぇだろうなぁ?」
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