徒花
だけど結局、何が言いたいのかわからない。

コウは先ほどよりもっと苛立ったのか、



「お前の決意はわかったよ。けど、結局今まで何やってたんだよ」

「落ち付けって」


コウを制したユキチくんは、腕時計に目を落とし、



「もうすぐ来るはずだから」

「はぁ?」

「俺が長々と説明するより、そっちの方が早いと思ったから呼んだんだよ。説明はそれからだ」

「誰か来るのか?」

「まぁ、その代わり、マリアちゃんは居づらくなるかもしれねぇけど」


その時だった。

「ゆきちゃん!」と甲高い声がした。


私とコウは同時に声の方に振り向いた。



「お待たせ! ……って、何で?」


育ちのいいお嬢様みたいに清楚な見た目のその人。

彼女は私たちを見て目を丸くする。


コウもひどく驚いているみたいだった。


誰?

なんて聞かなくても、だからわかってしまったのだと思う。



「千夏……」


あぁ、やっぱりか。

私は無言で席を立とうとした。


だけど、コウは私の腕を掴んでそれを制した。



「コウがいるなんて聞いてないよ、ゆきちゃん。おまけに、隣にいるのはカノジョさんでしょ? 何か私、惨めじゃないの」


惨めなのは私の方だと思った。
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