徒花
ユキチくんはバンッとテーブルを叩いた。



「コウにとっては結局、他人事なんだろ?! ほんとはカイのことなんかどうでもいいと思ってんだろ?! 色惚けして危機感すら失くしたかよ?!」

「うるせぇな! どうするもこうするも、あいつが何もしてねぇうちから、何をどうしろって言うんだよ!」

「何かしてからじゃ遅ぇだろ!」


ふたりは睨み合い、肩で息をする。


このままじゃ、どんどん収拾がつかなくなる。

せっかく会えたのに、また物別れに終わってしまう。



どうしたらいいのだろう、と思った時だった。



「はい、ストーップ」


この場には似つかわしくない、間延びした声がした。



現れたのはダボくんだった。


私はほっとした。

息が詰まりそうだったけど、やっと呼吸を許されたみたいに思えてくるからすごい。




「嫌な予感がして来てみればこれだ。ほんとお前ら、少しは冷静に話せない? 聞いてるこっちまでイライラしたよ」

「ダボ……」

「俺はユキチのその直情型な性格、嫌いじゃないよ。でも、やっぱりお前は人の気持ちを少し無視しすぎてる」

「俺は別に――」

「コウと意見が食い違うのは仕方ない。どっちにも言い分はあるからな。お前らが喧嘩するのは別にいいんだ」

「………」

「けど、そんなに大声を出すなら、よそで、ふたりでやれ。そしたら思う存分言い合えるし、誰も止めないさ」

「………」

「ただ、俺が言いたいのは、あんまり周りを巻き込むなってことだよ。巻き込むなら思い遣ってやれ。これじゃああんまりにも、千夏ちゃんとマリアちゃんが可哀想だ」


ダボくんは私に目をやり、
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