徒花
「お説教じゃないよ。別に今更、怒ることもないし」
「俺はマリアのその言葉さえ嫌味にしか聞こえないよ」
コウはとうとう半泣きになった。
今度は私より先に千夏さんが笑った。
「いいカノジョじゃないの、コウ。コウの今のカノジョが嫌な子なら、私はコウとの昔のことを掘り返して色々聞かせてやろうと思ってたけど。やめたわ」
冗談なのか、本気なのか。
千夏さんはおどけたように言った。
コウは目眩がしてるみたいだった。
「2年以上も付き合ってたのに、俺はお前がそんなことを言うキャラだったなんて知らなかったよ。それともこの街を離れて図太くなったか?」
「あら、女の腹は生まれつき黒いのよ」
「俺は大和撫子が好きなんだよ。お前だってそうだと思ってたのに」
「馬鹿ね、コウ。2年以上付き合ってて、ほんとに私のこと何もわかってなかったもんね」
コウはもう何も言えないみたいだった。
何を言っても墓穴を掘る結果にしかならないと悟ったらしい。
千夏さんは勝ち誇ったような顔をする。
「安心してよ。私、今はもう、コウに対する未練なんて微塵もないから」
「いや、別に俺は……」
「寂しい?」
「まさか。俺もお前に対する未練なんか微塵もねぇもん」
「そう。よかった」
コウは気まずそうに私を一瞥するが、また千夏さんの方へと顔を戻し、
「……ごめん」
「え?」
「ほんとはずっと、お前に謝りたかった。喧嘩別れみたいになったこともそうだし、その、子供の、こととかも……」
「気にしないでよ。忘れて。私ももう忘れるから。なかったことにしようよ。その方がお互いのためにもなるし、何より私もずっと気にされるより楽だわ」
「………」
「俺はマリアのその言葉さえ嫌味にしか聞こえないよ」
コウはとうとう半泣きになった。
今度は私より先に千夏さんが笑った。
「いいカノジョじゃないの、コウ。コウの今のカノジョが嫌な子なら、私はコウとの昔のことを掘り返して色々聞かせてやろうと思ってたけど。やめたわ」
冗談なのか、本気なのか。
千夏さんはおどけたように言った。
コウは目眩がしてるみたいだった。
「2年以上も付き合ってたのに、俺はお前がそんなことを言うキャラだったなんて知らなかったよ。それともこの街を離れて図太くなったか?」
「あら、女の腹は生まれつき黒いのよ」
「俺は大和撫子が好きなんだよ。お前だってそうだと思ってたのに」
「馬鹿ね、コウ。2年以上付き合ってて、ほんとに私のこと何もわかってなかったもんね」
コウはもう何も言えないみたいだった。
何を言っても墓穴を掘る結果にしかならないと悟ったらしい。
千夏さんは勝ち誇ったような顔をする。
「安心してよ。私、今はもう、コウに対する未練なんて微塵もないから」
「いや、別に俺は……」
「寂しい?」
「まさか。俺もお前に対する未練なんか微塵もねぇもん」
「そう。よかった」
コウは気まずそうに私を一瞥するが、また千夏さんの方へと顔を戻し、
「……ごめん」
「え?」
「ほんとはずっと、お前に謝りたかった。喧嘩別れみたいになったこともそうだし、その、子供の、こととかも……」
「気にしないでよ。忘れて。私ももう忘れるから。なかったことにしようよ。その方がお互いのためにもなるし、何より私もずっと気にされるより楽だわ」
「………」