徒花
「このお店の雰囲気が好きなの」
「あぁ、俺に声掛けられたくて、いつもわざとひとりで来てたわけか」
「ちょっと、私の話聞いてるの?」
なのに、したり顔のコウは、
「教えてやるよ、ビリヤード」
「えー?」
「『えー?』じゃねぇよ。ほら、立て」
腕を引っ張られた。
だから私はしぶしぶ立ち上がる。
と、その時、店のドアが開き、チャラチャラした若者の集団が――いつもコウと一緒にいる連中が、入ってくるなり私たちを見つけ、
「おー、コウ!」
「うわっ、例の子じゃん?」
「マジで付き合うことになったのかよ?!」
一気に騒がしくなった。
コウはあからさまに嫌そうな顔で、舌打ちする。
「うぜぇ。帰れよ」
「そんな邪険にしなくてもいいだろ。俺らだって、コウの心配してたんだから」
なだめるように言った茶髪の男は、
「なぁ、俺らにも紹介してくれよ」
「うるせぇ」
「ずっと狙ってて、やっと付き合えたんだろ? コウが全部の女と手切ってまで」
「黙れよ、カイ」
ちょっと意外だった。
私は思わず笑いそうになってしまう。
コウは本気で嫌そうな顔をするが、それでもカイとか呼ばれた彼は、気にせず話す。
「コウが、『あの子は俺が狙ってんだから声掛けたやつは殺す』とか言い出した時はマジでどうかしたんじゃないのかと思ったけど、まさか実を結ぶとは」
「あぁ、俺に声掛けられたくて、いつもわざとひとりで来てたわけか」
「ちょっと、私の話聞いてるの?」
なのに、したり顔のコウは、
「教えてやるよ、ビリヤード」
「えー?」
「『えー?』じゃねぇよ。ほら、立て」
腕を引っ張られた。
だから私はしぶしぶ立ち上がる。
と、その時、店のドアが開き、チャラチャラした若者の集団が――いつもコウと一緒にいる連中が、入ってくるなり私たちを見つけ、
「おー、コウ!」
「うわっ、例の子じゃん?」
「マジで付き合うことになったのかよ?!」
一気に騒がしくなった。
コウはあからさまに嫌そうな顔で、舌打ちする。
「うぜぇ。帰れよ」
「そんな邪険にしなくてもいいだろ。俺らだって、コウの心配してたんだから」
なだめるように言った茶髪の男は、
「なぁ、俺らにも紹介してくれよ」
「うるせぇ」
「ずっと狙ってて、やっと付き合えたんだろ? コウが全部の女と手切ってまで」
「黙れよ、カイ」
ちょっと意外だった。
私は思わず笑いそうになってしまう。
コウは本気で嫌そうな顔をするが、それでもカイとか呼ばれた彼は、気にせず話す。
「コウが、『あの子は俺が狙ってんだから声掛けたやつは殺す』とか言い出した時はマジでどうかしたんじゃないのかと思ったけど、まさか実を結ぶとは」