徒花
だから、互いにいつも、別々の人と付き合っても、結局は古巣に戻ってしまっていたけれど。


もう、てっちゃんとの間には、情しかなくて、だから私たちはセフレと変わりない。

それなのに、てっちゃんは、私が誕生日にプレゼントしてあげたバングルを、今も後生大事に身につけている。



「そんなにあんなやつがいい?」

「はぁ?」

「あいつは俺以上のろくでなしだろ。どうせ遊びだろうし、お前が何を言われたかは知らないけど、騙されてるだけじゃね?」


てっちゃんは、私の知らないコウを知っているのだろうか。

けれど、カチンときた私は、声を上げる。



「そういうこと言って、私がコウを嫌いになるとでも思ってんの?」

「やめとけって言ってんだろ。何でわかんねぇんだよ」

「言っとくけど、私、もしカレシいなくても、もうてっちゃんとはヨリ戻す気ないから」

「あ?」

「いい加減、嫌なんだよ。てっちゃんとの関係の先には何もない」

「じゃあ、あいつとならどんな風になれるって言うんだよ」


そんなこと、私にだってわからない。

けれど、少なくとも、またてっちゃんと繰り返すよりはいい。



「てっちゃん、カノジョいるくせに」

「関係ねぇよ。お前と戻れるなら、別れるし」

「今付き合ってる子も大事にできないんだね。てっちゃんは、昔からそう」

「お前だけは別だよ。『今度はちゃんとする』って言ったろ」

「『聞き飽きた』って、私も言ったでしょ。『今度は』、『今度は』って、そればっかりじゃない」


てっちゃんは、私の言葉に舌打ち混じりに唇を噛み締める。

だから私はてっちゃんに背を向けた。



「私とてっちゃんは、とっくの昔に終わってんの」


釘をさすように言い、私はその場を立ち去った。

てっちゃんに対する未練なんかない。

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