徒花
暴力
毎月、第一週目の日曜日。
特別な予定でもない限り、私はこの日だけは、おばあちゃんに会うために地元に戻る。
3月の風は優しくて、梅が枝に花をつけ始めた頃。
「おばあちゃん!」
住宅型老人ホームの一階には、広くて綺麗なオープンスペースがある。
先に連絡すると、いつもおばあちゃんはそこで私を待っててくれる。
「これ、お土産だよー。前におばあちゃんが美味しいって言ってた、お茶菓子。あと、こっちはイチゴね。ここに来る途中に、甘そうなの見つけたから」
「悪いねぇ、いつも」
「いいの、いいの。それに、これくらいさせてよ」
私は、おばあちゃんの、しわくちゃになった手を握る。
あったかい。
そんなことで自然と笑みがこぼれてしまう。
「腰は? もう痛くない?」
「マリアちゃんが教えてくれた漢方が、すごくよく効いてねぇ」
「ほんとに?」
「本当さね。飲み続けてると元気が出てきて、隣の部屋の吉井さんにも勧めたんだよ」
おばあちゃんはそう言って、私の手を握り返してくれた。
そして「ありがとうね」とおばあちゃんは言う。
私は、子供に戻ったみたいになる。
しかし、おばあちゃんは、ふと、不安げな目をして私を見た。
「向こうでの暮らしはどうだい? 困ったことは?」
「ないよ。大丈夫」
「本当かい? マリアちゃんはいつもおばあちゃんに心配を掛けさせないようにしようとするから」
「大丈夫だって、ほんと。おばあちゃんのおかげ」
それでもまだ不安げなままのおばあちゃんに、私は、
「私ちゃんと、バイトだってしてるよ。友達は、いーっぱい。あ、あとね、カレシもできたし」