徒花
「でも、どうかなぁ、あの人」
今まで私は、おばあちゃんに男の人を紹介したことなんてなかった。
だって、ろくでもないようなのとしか付き合ってこなかったから。
けれど、私だってもうハタチだし、いい加減、おばあちゃんを安心させる意味でも、嘘でもそういう人を連れてくるべきなのだろうと思い直し、
「まぁ、わかんないけど、聞いてみるよ」
「そうかい。楽しみだねぇ」
「そんな期待するほどじゃないと思うけど」
「何を言うんだい。マリアちゃんが選んだ人なら、間違いはないさね」
買いかぶりすぎだよと思いながら、私は苦笑いしか返せない。
おばあちゃんはしわくちゃの手で、私の手をさすりながら、
「おばあちゃんはね、老い先短いんだ」
「ちょっと、やめてよ、そういうの。おばあちゃんは元気じゃん」
「そんなことはないさ。あと10年、生きられるかどうかなんてわからない。それでもおばあちゃんは、マリアちゃんが幸せになったところを見届けてから死にたいんだ」
「おばあちゃん……」
「立派なウエディングドレスを着せてあげなきゃ、おばあちゃんは死んだ息子たちに申し訳が立たないよ」
おばあちゃんの目の淵は赤くなっていた。
私も泣きそうだった。
私は首を振る。
「私が幸せになったらおばあちゃんは死ぬんでしょ。だったら私、一生幸せになんかなりたくない。結婚だってしないもん」
「何を言うんだい」
「だって私、おばあちゃんが生きててくれる方が幸せだもん」
私は、人並みに結婚して子供を産んで、なんて未来は思い描けない。
むしろ、そんな気だってない。
ならば、それと引き換えにしてでも、おばあちゃんがずっと生きててくれることを望む。
たとえ無理だとわかっていても、そう望まずにはいられない。
今まで私は、おばあちゃんに男の人を紹介したことなんてなかった。
だって、ろくでもないようなのとしか付き合ってこなかったから。
けれど、私だってもうハタチだし、いい加減、おばあちゃんを安心させる意味でも、嘘でもそういう人を連れてくるべきなのだろうと思い直し、
「まぁ、わかんないけど、聞いてみるよ」
「そうかい。楽しみだねぇ」
「そんな期待するほどじゃないと思うけど」
「何を言うんだい。マリアちゃんが選んだ人なら、間違いはないさね」
買いかぶりすぎだよと思いながら、私は苦笑いしか返せない。
おばあちゃんはしわくちゃの手で、私の手をさすりながら、
「おばあちゃんはね、老い先短いんだ」
「ちょっと、やめてよ、そういうの。おばあちゃんは元気じゃん」
「そんなことはないさ。あと10年、生きられるかどうかなんてわからない。それでもおばあちゃんは、マリアちゃんが幸せになったところを見届けてから死にたいんだ」
「おばあちゃん……」
「立派なウエディングドレスを着せてあげなきゃ、おばあちゃんは死んだ息子たちに申し訳が立たないよ」
おばあちゃんの目の淵は赤くなっていた。
私も泣きそうだった。
私は首を振る。
「私が幸せになったらおばあちゃんは死ぬんでしょ。だったら私、一生幸せになんかなりたくない。結婚だってしないもん」
「何を言うんだい」
「だって私、おばあちゃんが生きててくれる方が幸せだもん」
私は、人並みに結婚して子供を産んで、なんて未来は思い描けない。
むしろ、そんな気だってない。
ならば、それと引き換えにしてでも、おばあちゃんがずっと生きててくれることを望む。
たとえ無理だとわかっていても、そう望まずにはいられない。