徒花
コウは考えるように目を伏せた。

そしてテーブルにある煮物を見て、また私に目をやり、



「考えとくわ」

「え?」

「まぁ、今すぐとかは無理だけど、そのうちな」

「マジで?!」

「おー」


思ってもみなかった答えに驚きながらも、私は嬉しさのあまり、コウに飛び付いた。

コウは肩をすくめて煮物をつつく。


何だかんだで優しい人。



「私、コウのそういうところ、好きだよ」

「どこ?」

「私に甘いところとか」

「何その、お姫様発言は。つーか、お前が俺を好きなのは当然のことだろうが。むしろ、俺の全部が好きなのが普通だろ」


自意識過剰で、自信過剰。

私は思わず噴き出したように笑ってしまった。



「じゃあ、コウは私のどこが好きなの?」

「知らん」

「ちょっと!」


無視されて、怒ったら、鼻で笑われた。



コウがいることが当たり前になった、私の日常。

取り立てて生活が変わったとかじゃないけれど、でも確実に笑うことが増えた。


平凡だけど、それが楽しい。


きっと、これを幸せというのだろうと、私は噛み締めるように思う。

だからずっとこんな風に、特に何もなく、日々が過ぎていってほしいと願っていた。

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