徒花
揺すられた私は、涙が溢れた。
コウの目が、怖かったから。
「それで逆にコウが刺されたりしたら、私どうすればいいのよ」
震える声で言った時だった。
コウの携帯が、この空気を打ち破るように着信音を響かせる。
コウは舌打ち混じりにディスプレイを確認し、通話ボタンを押した。
「はい? 大丈夫。今は公園。おー、わかった。じゃあ、後で」
電話を切り、煙草を取り出して咥えたコウは、
「行こうぜ。カイたち、居酒屋にいるらしいから」
腕を引かれて立たされた。
行きたくなんてなかった。
けれど、ひとりで帰ることもできなかった。
コウは私の涙を拭い、私の手を引いて歩き出す。
5分くらい歩き、駅近くの居酒屋に入った。
するとそこは貸し切り状態みたいに、コウの後輩くんたちが集まって、騒いでいた。
そして私たちに気付き、
「コウさん、さっき見ましたよー!」
「あれ、すごかったっすね! さっすがコウさん!」
「俺、マジ鳥肌立ちましたもん!」
酔っ払い連中は口々に声を掛けてきた。
コウは適当に「おー」としか返さないまま、私の手を引いて奥へ進む。
カイくんたちは、すでにビール片手だった。
「おまわりは?」
「知らん」
「顔見られてたっぽくね?」
「どうでもいいよ。いつものことだろ」
コウの目が、怖かったから。
「それで逆にコウが刺されたりしたら、私どうすればいいのよ」
震える声で言った時だった。
コウの携帯が、この空気を打ち破るように着信音を響かせる。
コウは舌打ち混じりにディスプレイを確認し、通話ボタンを押した。
「はい? 大丈夫。今は公園。おー、わかった。じゃあ、後で」
電話を切り、煙草を取り出して咥えたコウは、
「行こうぜ。カイたち、居酒屋にいるらしいから」
腕を引かれて立たされた。
行きたくなんてなかった。
けれど、ひとりで帰ることもできなかった。
コウは私の涙を拭い、私の手を引いて歩き出す。
5分くらい歩き、駅近くの居酒屋に入った。
するとそこは貸し切り状態みたいに、コウの後輩くんたちが集まって、騒いでいた。
そして私たちに気付き、
「コウさん、さっき見ましたよー!」
「あれ、すごかったっすね! さっすがコウさん!」
「俺、マジ鳥肌立ちましたもん!」
酔っ払い連中は口々に声を掛けてきた。
コウは適当に「おー」としか返さないまま、私の手を引いて奥へ進む。
カイくんたちは、すでにビール片手だった。
「おまわりは?」
「知らん」
「顔見られてたっぽくね?」
「どうでもいいよ。いつものことだろ」