徒花
コウは片手で抵抗しようとする私の手の自由を奪い、もう片手で私の服をまさぐる。
何でいきなりこんなことになるのかわからない。
薄いドア一枚を隔てた向こうで、みんなの騒ぐ声が聞こえてくる。
「やっ」
だから、私は嫌だと首を振る。
刹那、コウは私の顔の真横にある壁をガッと殴りつけ、
「ムカつくんだよ! やっぱ許せねぇ! 他のやつに触らせてんじゃねぇよ!」
低く吐き捨て、また私の体をまさぐった。
恐怖と、困惑のまま、私は体を硬直させる。
抵抗をやめた私を、コウの触手が蹂躙(じゅうりん)する。
私は唇を噛み締め、声を殺した。
狭い密室で、コウは無理な体勢のまま、私を後ろからうがつ。
うがたれながら、私がいけないからコウはこんなことをするんだと思った。
私がコウを怒らせてしまったんだ、と。
犯すように欲望を吐き出したコウは、私を掴んでいた手の力を緩めた。
私はその場にずるずると崩れる。
コウはそんな私を見降ろして、「ごめん」とだけ言った。
悲しくて堪らなくなった。
私は乱れた衣服を整えるより早く、コウを突き飛ばし、逃げるようにトイレから出た。
「マリアちゃん?!」
ダボくんの、驚いて呼び止める声さえ振り切り、私はそのまま店を出る。
泣きながら走った。
それでも私はコウを嫌いにはなれなかった。
何でいきなりこんなことになるのかわからない。
薄いドア一枚を隔てた向こうで、みんなの騒ぐ声が聞こえてくる。
「やっ」
だから、私は嫌だと首を振る。
刹那、コウは私の顔の真横にある壁をガッと殴りつけ、
「ムカつくんだよ! やっぱ許せねぇ! 他のやつに触らせてんじゃねぇよ!」
低く吐き捨て、また私の体をまさぐった。
恐怖と、困惑のまま、私は体を硬直させる。
抵抗をやめた私を、コウの触手が蹂躙(じゅうりん)する。
私は唇を噛み締め、声を殺した。
狭い密室で、コウは無理な体勢のまま、私を後ろからうがつ。
うがたれながら、私がいけないからコウはこんなことをするんだと思った。
私がコウを怒らせてしまったんだ、と。
犯すように欲望を吐き出したコウは、私を掴んでいた手の力を緩めた。
私はその場にずるずると崩れる。
コウはそんな私を見降ろして、「ごめん」とだけ言った。
悲しくて堪らなくなった。
私は乱れた衣服を整えるより早く、コウを突き飛ばし、逃げるようにトイレから出た。
「マリアちゃん?!」
ダボくんの、驚いて呼び止める声さえ振り切り、私はそのまま店を出る。
泣きながら走った。
それでも私はコウを嫌いにはなれなかった。