徒花
沙希は肩をすくめて「『他人』ねぇ」とため息混じり。
私は、てっちゃんのことを話しながらも、頭の中にはコウのことしかなかった。
「そんなにいい男なの? コウって人は」
「さぁ? どうかな。でも、好きだから困るよ」
「執着ってやつ?」
「わかんない。似てるから、私たち」
「私からしたら、てっちゃんとあんたのがお似合いだと思うけどねぇ」
「はいはい。それも聞き飽きた」
「でもまぁ、タイミングってあるけどさ、上手くいかないもんだね。そういう運命ってあるのかも」
沙希は感慨深げにまたアルコールを流した。
「沙希はどうなの?」
「私もダメだね。上手くいかない。ほんと、タイミングの問題っていうか」
「何? 好きな人でもいるの?」
「どうだろうねぇ。まぁ、また進展あったらその時に話すわ」
言って、沙希は空になったアルコールグラスを手に、「じゃあね」と私に向かって手をひらひらとさせる。
去って行くその背を眺めながら、私はよくわからずに首を傾げた。
携帯が着信音を響かせたのは、そんな時だった。
ディスプレイには【コウ】と表示されていた。
「はい?」
「俺だけど」
「うん」
「会いたいんだけど」
「……わかった」
コウは「ショットバーで待ってる」とだけ言った。
電話を切り、私は息を吐いて宙を仰いだ。
答えなんて、考えるまでもない。
私は、てっちゃんのことを話しながらも、頭の中にはコウのことしかなかった。
「そんなにいい男なの? コウって人は」
「さぁ? どうかな。でも、好きだから困るよ」
「執着ってやつ?」
「わかんない。似てるから、私たち」
「私からしたら、てっちゃんとあんたのがお似合いだと思うけどねぇ」
「はいはい。それも聞き飽きた」
「でもまぁ、タイミングってあるけどさ、上手くいかないもんだね。そういう運命ってあるのかも」
沙希は感慨深げにまたアルコールを流した。
「沙希はどうなの?」
「私もダメだね。上手くいかない。ほんと、タイミングの問題っていうか」
「何? 好きな人でもいるの?」
「どうだろうねぇ。まぁ、また進展あったらその時に話すわ」
言って、沙希は空になったアルコールグラスを手に、「じゃあね」と私に向かって手をひらひらとさせる。
去って行くその背を眺めながら、私はよくわからずに首を傾げた。
携帯が着信音を響かせたのは、そんな時だった。
ディスプレイには【コウ】と表示されていた。
「はい?」
「俺だけど」
「うん」
「会いたいんだけど」
「……わかった」
コウは「ショットバーで待ってる」とだけ言った。
電話を切り、私は息を吐いて宙を仰いだ。
答えなんて、考えるまでもない。