徒花


日曜日。

コウはちゃんと約束を守ってくれ、時間通りに、ジャケット姿で私を迎えに来てくれた。


車に乗り、思わずにやにやしてしまった私を見たコウは、怪訝に眉根を寄せ、



「何?」

「いやぁ、別にぃ」

「何だよ?」

「だって、コウ、ほんとにおばあちゃんと会ってくれるなんて思わなかったから、私、直前までそわそわしてたんだけど」

「馬鹿か。俺が嘘つくわけねぇだろ」

「おまけにビシッとキメちゃってるしぃ?」

「うるせぇ」

「でも、似合ってる。かっこいい」

「当然だろ。つーか、俺は顔がいいから何着ても似合うんだよ」

「はいはい」


受け流したら、「この野郎」と言ったコウに頭をぐしゃぐしゃにされた。

「ひっどーい!」と言いながらも、私は笑う。


快晴の中、走り出した車。



コウの煙草の煙が、半分ほど開けた窓から外に流れていく。



「なぁ、ばあちゃんってどんな人?」

「私を目の中に入れても痛くないって思ってるような人、かな」

「すげぇな。けどまぁ、甘やかされて育ったんだろうなとは、誰かさんを見てればわかるけど」

「ちょっと、それどういう意味よ!」

「そのままの意味だろ」


嫌味混じりに言ったコウは、



「俺もある意味では甘やかされてきたけど、お前とは根本的なところが違うもんな」


ぼそりと付け加えた。


何か言った方がいいのだろうか。

今なら聞いてもいいのだろうか。



「コウは?」
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