徒花
私たちは似てる。

けれどやっぱり、根本的なことが違う。


コウは愛されなかった側の人間なのだろう。



「カイが言ったことは正しいよ。俺は確かに、『金持ちのボンボン』で、『甘やかされて育っただけの放蕩息子』なんだよ」

「………」

「昔は何でも買ってもらった。俺が右って言ったら家族みんな、左も右になるって感じで。俺は、本気で自分は王様だと思ってたよ。まぁ、その結果がこれだけどな」


「だから俺は失敗作なんだよ」と、皮肉っぽく言ったコウは、そして私を一瞥し、



「でも、別にいいし。どうでもいいっつーか。今はお前がいるからさ」

「コウ……」

「あ、感動した?」

「馬鹿」


茶化して、笑う。

笑ってあげなければならないのだと思った。


何でもないことのように言っているけれど、多分コウはまだ、それを消化できないでいるままなのだろうから。


高速道路をひた走る車。

同じように続く景色を眺めながら、私は、死んでしまったパパとママのことを想った。



「けどさ、私たちは、それぞれの20年を過ごしてきたから、今、こうして一緒にいられてるわけでしょ」

「だな」

「だからきっと、悲しかった出来事も無駄じゃない。私はそう思いたい」


それは、ただの願いだったのかもしれないけれど。

コウはふっと笑った。



「だといいけどな」


やがて標識は、私の地元に入ったことを示す。

けれどもう、緊張はなかった。


私は、おばあちゃんに、胸を張ってコウを紹介しようと思った。

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