徒花
ほんとに、この男は。
また顔が緩みそうになったけれど、悔しくなり、
「無病息災って意味、わかってる? コウ、私のこと、風邪とかからも守れるの?」
「ほんと可愛くねぇなぁ、お前は」
コウはさすがに毒づく。
「今ここで犯すぞ、馬鹿」
「やだっ、怖い! 警察、警察! 110番!」
「おい、この野郎」
じゃれて、笑った。
境内(けいだい)に、私たちの無邪気な声が響く。
神様だとか仏様だとか、よくわかんないし、信仰心なんて微塵もないけれど、でも私たちを守ってくれるなら、何だっていいと思った。
「じゃあ、私は、おばあちゃんの健康と、コウが誰かに刺されたりしませんようにって祈ってあげる」
「刺されねぇし。不吉なこと言うな」
「わかんないじゃん、そんなこと。コウ、喧嘩するしさ」
「もうしねぇよ。うるせぇ女がいることだし」
「誰のことだか」
「お前だろ」
「私はうるさい女じゃないもーん」
「あぁ、減らず口の可愛くない女だったな」
「はぁ?!」
そしてまた私たちはじゃれ合う。
都会の喧騒とは無縁の、洗われるような澄んだ空気。
こういうところでなら、私たちは、願った通りになれたのかもしれないけれど。
「さーて、帰るか」
あの街に。
今の私たちの、生きる場所に。
あそこに、私たちは、何を求めているのかはわからないけれど。
また顔が緩みそうになったけれど、悔しくなり、
「無病息災って意味、わかってる? コウ、私のこと、風邪とかからも守れるの?」
「ほんと可愛くねぇなぁ、お前は」
コウはさすがに毒づく。
「今ここで犯すぞ、馬鹿」
「やだっ、怖い! 警察、警察! 110番!」
「おい、この野郎」
じゃれて、笑った。
境内(けいだい)に、私たちの無邪気な声が響く。
神様だとか仏様だとか、よくわかんないし、信仰心なんて微塵もないけれど、でも私たちを守ってくれるなら、何だっていいと思った。
「じゃあ、私は、おばあちゃんの健康と、コウが誰かに刺されたりしませんようにって祈ってあげる」
「刺されねぇし。不吉なこと言うな」
「わかんないじゃん、そんなこと。コウ、喧嘩するしさ」
「もうしねぇよ。うるせぇ女がいることだし」
「誰のことだか」
「お前だろ」
「私はうるさい女じゃないもーん」
「あぁ、減らず口の可愛くない女だったな」
「はぁ?!」
そしてまた私たちはじゃれ合う。
都会の喧騒とは無縁の、洗われるような澄んだ空気。
こういうところでなら、私たちは、願った通りになれたのかもしれないけれど。
「さーて、帰るか」
あの街に。
今の私たちの、生きる場所に。
あそこに、私たちは、何を求めているのかはわからないけれど。