徒花

選択



おばあちゃんに会いに行った日以来、私たちは、前にも増して一緒にいた。

カイくんは、そんな私たちを、前にも増して呆れた目で見ていたけれど。



「ほんと、よく飽きないよなぁ。毎日毎日、イチャコラやってて。おまけにコウは、最近じゃすっかり牙が抜けちまってさぁ」

「うるせぇんだよ。どの女と付き合っても長続きしねぇやつのひがみなんて、いちいち聞いてらんねぇよ」

「おいおい、それって俺のことかよ」

「他に誰が?」

「あぁ?!」


何でこのふたりは、互いにそこまで言い合うのか。

私は無視して酒を流した。



「つーか、お前、人を呼び出しておいて、文句言いたいだけなら帰れよ。『話がある』って言うからわざわざ来てやったのに」

「いや、だからそれはだなぁ」


もごもごと言ったカイくんは、気まずそうに私を一瞥する。

どうやら私がいては話しづらいことらしい。


なのに、そんなことを気にする様子もないらしいコウは、



「何だよ? 言えよ。そこまで言われたら気になるだろ」

「わかったよ。もういいよ。じゃあ言ってやる」


カイくんは、そして咳払いひとつ。



「千夏、今こっちに戻ってきてる」

「……は?」

「で、『コウに会いたい』って言ってる。話したいことがあるんだって」


コウは困惑したような顔で目を見開く。


“千夏”って、誰?

女だろうし、どうせコウと何かあった人なのだろうけど、でも私は聞きたい言葉を辛うじて喉元で止め、興味のないふりをする。



「何で今更……」

「さぁ? 俺が知るわけないだろ。そういうことは本人に聞けよ」
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