徒花
自分で自分が何を言っているのかわからなかった。

けれど、言葉は止まらなくて。


コウはさすがにうんざりした顔をする。



「何いきなりキレてんだよ。意味わかんねぇ。別の日にしようって言ってんだから、それでいいだろ」

「よくないよ!」


別の日じゃあ、意味がない。

今からこの街を出なきゃ、何の意味もないのに。


コウは、なのに、さらにめんどくさそうに舌打ちを吐き捨て、



「お前さぁ、最近マジで何なの? 本気で気分悪ぃ。何が気に入らねぇんだよ」


元カノに対抗心を燃やしてるだなんて、言えるはずもなくて。

私は悔しくて唇を噛み締めた。


どうして私たちが喧嘩しなきゃならないのか。



「コウだって……」

「あ?」

「コウだってそうじゃん! 私といても、いつも別のこと考えてる! 話聞いてない時もあるし、そっちこそ何なのよ!」


叫び散らした。

けれどコウは言い返しもせず、目を逸らすだけ。


その態度に、私の中の糸が切れた。



「やっぱり私がいるから悪いんでしょ! 私がいなきゃ、元カノと話ができるしね!」

「………」

「もういいよ! 勝手にすれば!」


そのまま店を飛び出した。

怒りのままに走って、息が切れたところで足を止め、振り向いたけれど、コウは私を追っては来なかった。


私はその場で膝を抱えた。

< 72 / 286 >

この作品をシェア

pagetop