徒花
「どうすんの?」
「何がよ?」
「コウのこと、どうにかしてでも探そうと思えば、できないこともないと思うけど」
「………」
「でも、もしも本当に千夏と一緒にいるところ目の当たりにしっちゃったら、もう誤魔化せなくなるよ。けど、見ないままなら後で笑い話にも変えられる」
カイくんはもう一度「どうすんの?」と私に問うてきた。
それはつまり、真実を突き詰める勇気はあるのか、ということだ。
私は乾いた笑いを浮かべながら、カイくんの隣に腰を下ろした。
そんなこと、私にできるわけがない。
カイくんは、そんな私を一瞥し、ふっと笑う。
小馬鹿にされたのかもしれないけれど、もうどうだってよかった。
「ねぇ、“千夏さん”ってどんな人?」
問うた私に、カイくんはまた煙を吐き出しながら、
「可愛いよ。真っ直ぐで、駆け引きなんて知らない。まぁ、それを馬鹿だと思うやつも多いんだろうけどさ。とにかくコウのことが好きで。コウもそんな千夏が好きだった」
「………」
「でも、コウはあの通りの、ろくでなしだから。千夏と付き合ってる間も、喧嘩や、浮気や、とにかくどうしようもないことしまくってて、いっつも千夏を泣かせてた」
「………」
「コウはコウで、家のこととか色々あって、ストレスを発散させたかっただけなのかもしれないけど。でも、そういうのってお互いに思ってるだけじゃ伝わんないじゃん?」
「………」
「俺からしたら、もっと話し合うべきだったと思う。けど、ふたりはそうしなかった。悲しかったと思うよ、千夏は。コウは何も言わないわけだし」
「………」
「とにかくそれで、千夏はコウと別れることを決めたんだ。1年前のことだよ。千夏はコウのことを忘れたくて、この街を出て、知らない場所で心機一転」
「………」
「けどさ、上手くいかなかったみたいで。友達はできない、仕事も合わない、おまけにひとり暮らしも辛い。だから戻りたくなった」
「………」
「こっちに戻って、もう一度コウとやり直して、少し大人になれた今なら、もう同じ轍は踏まないはずだ、とでも思ったんじゃないかな」
「何がよ?」
「コウのこと、どうにかしてでも探そうと思えば、できないこともないと思うけど」
「………」
「でも、もしも本当に千夏と一緒にいるところ目の当たりにしっちゃったら、もう誤魔化せなくなるよ。けど、見ないままなら後で笑い話にも変えられる」
カイくんはもう一度「どうすんの?」と私に問うてきた。
それはつまり、真実を突き詰める勇気はあるのか、ということだ。
私は乾いた笑いを浮かべながら、カイくんの隣に腰を下ろした。
そんなこと、私にできるわけがない。
カイくんは、そんな私を一瞥し、ふっと笑う。
小馬鹿にされたのかもしれないけれど、もうどうだってよかった。
「ねぇ、“千夏さん”ってどんな人?」
問うた私に、カイくんはまた煙を吐き出しながら、
「可愛いよ。真っ直ぐで、駆け引きなんて知らない。まぁ、それを馬鹿だと思うやつも多いんだろうけどさ。とにかくコウのことが好きで。コウもそんな千夏が好きだった」
「………」
「でも、コウはあの通りの、ろくでなしだから。千夏と付き合ってる間も、喧嘩や、浮気や、とにかくどうしようもないことしまくってて、いっつも千夏を泣かせてた」
「………」
「コウはコウで、家のこととか色々あって、ストレスを発散させたかっただけなのかもしれないけど。でも、そういうのってお互いに思ってるだけじゃ伝わんないじゃん?」
「………」
「俺からしたら、もっと話し合うべきだったと思う。けど、ふたりはそうしなかった。悲しかったと思うよ、千夏は。コウは何も言わないわけだし」
「………」
「とにかくそれで、千夏はコウと別れることを決めたんだ。1年前のことだよ。千夏はコウのことを忘れたくて、この街を出て、知らない場所で心機一転」
「………」
「けどさ、上手くいかなかったみたいで。友達はできない、仕事も合わない、おまけにひとり暮らしも辛い。だから戻りたくなった」
「………」
「こっちに戻って、もう一度コウとやり直して、少し大人になれた今なら、もう同じ轍は踏まないはずだ、とでも思ったんじゃないかな」