徒花
したり顔のコウ。


強い風が吹き上げて、私は思わず目を細めた。

そしたら眼下の輝きまでも、宝石のようにキラキラした。



「飲み物買ってくるから。コーヒーでいい? 待ってて」

「え? あ、待って! 私コーヒーはあんまり……」

「そっか。じゃあ、それ以外で何か適当に買ってくるわ」


コウは、そして私の頭を軽くひと撫でし、きびすを返した。

その背を見つめながら、何だかなぁ、と思った。


あの人は、もしかしたら私が思っているよりいい人なのかも、と。



ぼうっと景色を眺めていると、少しして、コウが戻ってきた。



「はい、これ」


差し出されたのは、飲み物ではなく、男物の上着だった。



「何?」

「俺のだけど、羽織ってろよ。2月のこんな寒空の下だもん。風邪引かせるために連れてきたわけじゃねぇから」


有無を言わさず肩から掛けられた。


あたたかい。

甘い、いい匂いがする。



「あと、こっちも。ココアくらいしかなかったんだけど」


手渡された缶は、ホットだった。

私はそれを両手をあたためるように持った。


コウは自分の缶コーヒーのプルタブを開ける。



図らずも、そんな程度のことでときめいてしまった自分に苦笑いする。
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