徒花


ベッドでまどろみながら、コウは私の体を引き寄せる。

互いの熱で互いを溶かす。


もう、それでいいんじゃないかと思った。


許すも許さないもなくて。

結局、私たちが繋がっていられる唯一の方法は、セックスしかないのだ。



行為の終わり、コウは荒い息を整えながら、私に軽くくちづけをして、



「いつにする?」

「何が?」

「結婚」


私は目を丸くした。



「あれ、本気だったんだ?」

「冗談だと思ってた? ひでぇな。俺は本気で言ったのに」


突拍子もない話で、私には現実離れしすぎていた。

だから想像してみたって、ちっともわからない。


コウは私から体を離し、



「とりあえず、ばあちゃんにもう一回、挨拶だな。あと、クソ親父にも」

「……お父さん?」

「形だけはしとかなきゃだろ。まぁ、あいつにとっては、俺が何してようと興味ねぇだろうけど」


コウは勝手に話を進めていく。

私は口を尖らせた。



「やだなぁ、私。浮気者の旦那で苦労したくなーい」

「だからもう二度としねぇっつってんだろ。結婚するんだぞ? 嫁を守らなきゃいけない男にそんな暇はない」

「じゃあ、暇があったらするんだ?」

「揚げ足取りか、てめぇ」


笑いながら、思った。


もしかしたら、コウは誰よりあたたかい家族というものに憧れているんじゃないか、と。

コウの言うことは、どれも理想の家族像ばかりなのだから。
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