徒花


コウとふたりでいつものようにショットバーにきたら、ユキチくんとダボくんがふたりでビリヤードをしていた。

そして私たちに気付き、「おー」と片手を上げる。



「今日、カイは?」

「知らね。最近、機嫌悪いみたいで、あんま会ってねぇんだよ。ほとんど電話にも出ねぇし」

「あいつ、何かあった?」

「さぁ? まぁ、何かあったって、秘密主義のカイが俺らに話すわけねぇし。放っとけばまたそのうち電話してくるっしょ」

「だな」


まるで日常茶飯事みたいな言い方をする3人。

彼らなりの友情は、今も私にはよくわからない。



「それより、お前らのことだよ。どうなってんだよ?」

「そうだよ。カイが『別れるかも』とか言ってたから驚いてたら、戻ってるし、おまけに今は一緒に暮らしてるって?」

「何でそういうことになってんだよ?」


ふたりはビリヤードの存在さえ忘れ、口々に言って私たちに詰め寄ってくるが、



「うるせぇなぁ。関係ねぇだろ」


コウは一蹴した。

が、そんなものをものともしないふたりは、



「もしかしてコウ、またいつもの浮気の虫か?」

「おいおい、マジかよ。パンツ下ろせ、パンツ! 毛剃ってたらアウトだ!」

「やめろっつの! 剃ってねぇよ!」


ズボンのベルトを死守するコウを、追い掛けるユキチくんとダボくん。


揃って子供みたいだった。

カイくんがいないと騒ぎがエスカレートする一方だ。
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