徒花
ひとしきり笑ったふたりは、コウに酒を差し出し、
「そう怒るなよ。で? いつするんだ? 結婚」
今度はなだめるように聞く。
コウは舌打ち混じりに酒を受け取り、
「どうせなら、ハタチのうちにしときてぇとは思うけど。まぁ、なるべく早くだな」
「式は?」
「するよ。五百、いや、千人は呼んで、盛大に」
「千人ってお前、それじゃあ、芸能人か政治家レベルだろ。そんなに呼ぶやついんのかよ」
「うるせぇなぁ。呼んだもん勝ちだろ。大体、一生に一度の大イベントなんだから、盛大にしねぇでどうすんだよ」
さすがにそれには、ユキチくんとダボくんも肩をすくめて顔を見合わせる。
「馬鹿だ」
「やっぱこいつ、本物の馬鹿だ」
「あぁ?!」
で、また始まった、鬼ごっこ。
結婚式もこんな調子だったらどうしようと、一抹の不安がよぎる。
そんな時だった。
「よう、コウ! ユキチとダボも揃ってんじゃねぇか。カイはどうしたよ?」
恰幅がいい、スーツの人が、背後から声を掛けてきた。
後ろに何人かを従えて、とても一般人とは思えないような空気をまとっている。
「何だよ、飲んでんのか? いいじゃねぇか、いいじゃねぇか。今日は気分がいいんだ。お前らの分、払っといてやるよ」
「菅野さん……」
菅野さんと呼ばれたその人は、鋭い目をさらに細めてクッと笑う。
「ところでお前ら、いつになったらうちの組に入るんだよ? いい加減、待ちくたびれたぞ」
「入らないって言ってるじゃないっすか。俺らはヤクザ屋に就職なんてしませんよ。自由に遊んでる方が性に合ってますんで」
「んなこと言って、都合のいい時だけ連絡してきやがるんだから。嫌なガキだよ、お前らはよぉ」
「そう怒るなよ。で? いつするんだ? 結婚」
今度はなだめるように聞く。
コウは舌打ち混じりに酒を受け取り、
「どうせなら、ハタチのうちにしときてぇとは思うけど。まぁ、なるべく早くだな」
「式は?」
「するよ。五百、いや、千人は呼んで、盛大に」
「千人ってお前、それじゃあ、芸能人か政治家レベルだろ。そんなに呼ぶやついんのかよ」
「うるせぇなぁ。呼んだもん勝ちだろ。大体、一生に一度の大イベントなんだから、盛大にしねぇでどうすんだよ」
さすがにそれには、ユキチくんとダボくんも肩をすくめて顔を見合わせる。
「馬鹿だ」
「やっぱこいつ、本物の馬鹿だ」
「あぁ?!」
で、また始まった、鬼ごっこ。
結婚式もこんな調子だったらどうしようと、一抹の不安がよぎる。
そんな時だった。
「よう、コウ! ユキチとダボも揃ってんじゃねぇか。カイはどうしたよ?」
恰幅がいい、スーツの人が、背後から声を掛けてきた。
後ろに何人かを従えて、とても一般人とは思えないような空気をまとっている。
「何だよ、飲んでんのか? いいじゃねぇか、いいじゃねぇか。今日は気分がいいんだ。お前らの分、払っといてやるよ」
「菅野さん……」
菅野さんと呼ばれたその人は、鋭い目をさらに細めてクッと笑う。
「ところでお前ら、いつになったらうちの組に入るんだよ? いい加減、待ちくたびれたぞ」
「入らないって言ってるじゃないっすか。俺らはヤクザ屋に就職なんてしませんよ。自由に遊んでる方が性に合ってますんで」
「んなこと言って、都合のいい時だけ連絡してきやがるんだから。嫌なガキだよ、お前らはよぉ」