徒花
そして菅野さんとやらは、「帰るぞ」と、後ろの男たちに言った。
「じゃあな。お前ら、また今度ゆっくり話そうぜ」
去っていくその背を見送る。
菅野さんとやらが店を出た後、コウは舌打ち混じりに「うぜぇ」と吐き捨てた。
「マジで余計な世話だっつーの。あいつ絶対、マリアのこと変な目で見てやがった」
「はぁ?」
「だってそうだろ。じゃなきゃ、いちいちあんなことまで聞いてこねぇよ」
「何言ってんだか」
それでもまだ、コウは不満げだった。
ユキチくんとダボくんは、さすがに気を遣ってくれたらしく、
「まぁ、そんな話はいいじゃねぇかよ。結婚するんだろ? 仲よくやれよ、仲よくさぁ」
「そうだよ。酒が不味くなったから、飲み直そうぜ。どうせ菅野の野郎の奢りなんだから、パーッとやろうぜ」
ふたりはバーテンに酒を追加させた。
「しっかし、コウが結婚とはねぇ。カイが聞いたら驚くだろうなぁ。電話してみるか?」
「やめとけよ。機嫌が悪い時のカイに何言っても無駄。火に水をかけたつもりが、油に変わってるって話だよ」
「さすがは、付き合い長いと違うねぇ、ユキチは。カイとは小学校からだもんなぁ?」
「コウとダボだってそうだろ。今でも思い出すよ、俺らが高校で初めて会った時のこと」
「正確には、コウとカイが、だろ? いきなり喧嘩しやがってさぁ」
「なぁ? 俺ら、関係ないのに巻き添えで停学だよ。あれは腹立ったよなぁ」
「なのに、まさか仲よくなって、おまけに卒業してもこうやってツルむとは思いもしなかった」
私の知らない、思い出話。
でも、簡単に想像できたから、ちょっと笑えた。
笑ったら、さっきのことがどうでもよく思えてきたから不思議なものだ。
コウも私と目が合うと、困ったように肩をすくめた。
「じゃあな。お前ら、また今度ゆっくり話そうぜ」
去っていくその背を見送る。
菅野さんとやらが店を出た後、コウは舌打ち混じりに「うぜぇ」と吐き捨てた。
「マジで余計な世話だっつーの。あいつ絶対、マリアのこと変な目で見てやがった」
「はぁ?」
「だってそうだろ。じゃなきゃ、いちいちあんなことまで聞いてこねぇよ」
「何言ってんだか」
それでもまだ、コウは不満げだった。
ユキチくんとダボくんは、さすがに気を遣ってくれたらしく、
「まぁ、そんな話はいいじゃねぇかよ。結婚するんだろ? 仲よくやれよ、仲よくさぁ」
「そうだよ。酒が不味くなったから、飲み直そうぜ。どうせ菅野の野郎の奢りなんだから、パーッとやろうぜ」
ふたりはバーテンに酒を追加させた。
「しっかし、コウが結婚とはねぇ。カイが聞いたら驚くだろうなぁ。電話してみるか?」
「やめとけよ。機嫌が悪い時のカイに何言っても無駄。火に水をかけたつもりが、油に変わってるって話だよ」
「さすがは、付き合い長いと違うねぇ、ユキチは。カイとは小学校からだもんなぁ?」
「コウとダボだってそうだろ。今でも思い出すよ、俺らが高校で初めて会った時のこと」
「正確には、コウとカイが、だろ? いきなり喧嘩しやがってさぁ」
「なぁ? 俺ら、関係ないのに巻き添えで停学だよ。あれは腹立ったよなぁ」
「なのに、まさか仲よくなって、おまけに卒業してもこうやってツルむとは思いもしなかった」
私の知らない、思い出話。
でも、簡単に想像できたから、ちょっと笑えた。
笑ったら、さっきのことがどうでもよく思えてきたから不思議なものだ。
コウも私と目が合うと、困ったように肩をすくめた。