徒花
私の部屋に、次第にコウのものが増えていく。
ペアの食器まで揃えて、まるで新婚生活みたいだった。
「コウさん、結婚するってマジっすか?!」
「俺も聞きました! すげぇビビったっすよ!」
いつものようにショットバーでビリヤードをする私たちを見つけて詰め寄ってきた、後輩くんたち。
コウは「何で知ってんだよ」と言いながら、横にいるユキチくんとダボくんを睨む。
「式はいつですか?!」
「俺らも呼んでくださいよ! 絶対っすよ! 正装で行きますから!」
目を輝かせて言う後輩くんたちに、コウは、
「マジで無理。お前らの『正装』って、特攻服じゃねぇかよ。そんなもん着てこられちゃ迷惑だっつーの」
「でもコウさんから譲り受けたものっすよ?!」
「馬鹿! 余計なこと言うな!」
コウは後輩くんの頭をバシッと叩く。
不良だとは思ってたけど、まさか筋金入りだったとは。
バツが悪そうなコウと、呆れた私に、笑いながらダボくんが口を挟む。
「コウはこいつらのチームの、初代総長なんだよ。あの頃が一番イケイケだったよなぁ、コウ?」
「おい、ダボ!」
「いいじゃん、いいじゃん。昔のことなんだし、事実は事実だろ? 結婚するのに隠しごとはイカンよ」
「うるせぇなぁ。アレは俺の中では消したい過去なんだっつーの」
「まぁ、そりゃそうだよな。高校中退して、荒れまくって。喧嘩ばっかして、パクられて、鑑別に入れられて、親からも見放されて。若さゆえの過ちとはいえ、アレはなぁ」
ダボくんは苦笑いだった。
コウはよっぽど私に知られたくなかったのか、不貞腐れたような顔をする。
「いいか、よく聞け。俺はあの頃とは違ぇんだよ。今はマリアを幸せにしてやるって決めたんだ」