徒花
コウは恥ずかしげもなくみんなの前でそう言った。

さすがに私は赤くなる。


けれど、慣れたものなのか、ユキチくんとダボくんは、感心したように腕を組み、



「やっぱ、お前はすげぇよ。馬鹿だけど」

「なぁ? その顔で、そうはっきり言われちゃ、男の俺でも痺れるもんな。間違って惚れそうだわ。馬鹿だけど」

「馬鹿でも普通は言えねぇぞ? だから、コウはすげぇ」

「コウのいいとこだよな、そこは。ただ、馬鹿だけど」


褒めているのか、けなしているのか。

ふたりの言葉にコウはさらに不貞腐れた顔になった。


私と後輩くんたちは思わず噴き出したように笑ってしまう。



ダボくんは言った。



「まぁ、いいんじゃないの? 少なくとも俺は賛成してるぜ、ふたりの結婚」

「ダボ……」

「小学校からの付き合いだけど、コウは何だかんだで憎めないやつだし、いいとこあるからさぁ。得意の浮気さえしなきゃ、だけど」

「………」

「マリアちゃんだって、美人だし、いい子だし。コウにはもったいないくらいだけど、でもお似合いだと思うよ。何より、コウが心を入れ替えたのは、マリアちゃんのおかげだ」


ダボくんは、そして急に真面目な顔をして、



「で、どうすんの? あのコウの親が、簡単に認めるとは思わないけど」

「大丈夫だって。どうせ俺は“失敗作”なんだから。家のことは弟が継ぐだろうし、反対するほど俺のこと気にしてねぇよ」

「そうかぁ?」

「そうだよ。だから形だけ挨拶しとけばいい」


コウはやっぱりご両親と和解する気はないらしい。

横で聞いているだけだったユキチくんが、そこで口を挟んだ。



「なぁ、コウ。俺はお前のそういう楽観的なとこ好きだけど、気をつけろよ。何事も簡単に考えすぎてると、足元掬われることもあるんだから」

「わーかってるっつーの」


コウは聞き流すように言うだけだった。

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