徒花
「ふざけてねぇよ。本気だ」
けれど、お父さんは無視して私を一瞥し、
「相手はそちらのお嬢さんか? 何だ? 子供でもできたのか? 堕ろす金がないわけじゃないだろうに、血迷いおって」
「はぁ?」
「大体、貴様は結婚というものがどういうものかわかっているのか? 妻子を体ひとつで支えていくということだぞ? ろくに仕事さえしたことのない、お前が?」
「………」
「結婚すると言うなら、もうわたしから金を送る必要はないということだろう? まさかわたしの金で家族を養うつもりじゃあなかろうし」
「………」
「どうした? 違うのか?」
コウは奥歯を噛んで拳を作った。
さすがにお母さんが、
「あ、あなた。何もそんな言い方は……」
けれど、お父さんはさらに言う。
「何が『本気』だ。ふざけてないとはよく言える。わたしは貴様のままごとに付き合ってやるほど暇じゃない」
「………」
「そのお嬢さんがどういう人間かは知らない。もしかしたらとても素晴らしい人間なのかもしれない。が、わたしは認めない」
「………」
「それが要件だというなら、もう話は終わりだ。さっさと『この家の血さえ入ってない“他人”』のそのお嬢さんを連れて、帰りなさい」
コウは拳を震わせ、ガラステーブルをガッと殴りつけた。
パリン、と音を立てて蜘蛛の巣のようになる、ガラステーブル。
私と、お母さんと、弟くんは、ひっと顔を引き攣らせたが、お父さんは眉ひとつ動かさない。
「貴様は昔からそうだ。我が儘が通らなければすぐに駄々をこねて物を壊して。子供の頃から何の成長もしていない」
「何だと?」
「母親の教育が悪かったんだ。貴様を甘やかし過ぎたから、こんな人間になってしまった」
「黙れよ、クソジジイ!」
けれど、お父さんは無視して私を一瞥し、
「相手はそちらのお嬢さんか? 何だ? 子供でもできたのか? 堕ろす金がないわけじゃないだろうに、血迷いおって」
「はぁ?」
「大体、貴様は結婚というものがどういうものかわかっているのか? 妻子を体ひとつで支えていくということだぞ? ろくに仕事さえしたことのない、お前が?」
「………」
「結婚すると言うなら、もうわたしから金を送る必要はないということだろう? まさかわたしの金で家族を養うつもりじゃあなかろうし」
「………」
「どうした? 違うのか?」
コウは奥歯を噛んで拳を作った。
さすがにお母さんが、
「あ、あなた。何もそんな言い方は……」
けれど、お父さんはさらに言う。
「何が『本気』だ。ふざけてないとはよく言える。わたしは貴様のままごとに付き合ってやるほど暇じゃない」
「………」
「そのお嬢さんがどういう人間かは知らない。もしかしたらとても素晴らしい人間なのかもしれない。が、わたしは認めない」
「………」
「それが要件だというなら、もう話は終わりだ。さっさと『この家の血さえ入ってない“他人”』のそのお嬢さんを連れて、帰りなさい」
コウは拳を震わせ、ガラステーブルをガッと殴りつけた。
パリン、と音を立てて蜘蛛の巣のようになる、ガラステーブル。
私と、お母さんと、弟くんは、ひっと顔を引き攣らせたが、お父さんは眉ひとつ動かさない。
「貴様は昔からそうだ。我が儘が通らなければすぐに駄々をこねて物を壊して。子供の頃から何の成長もしていない」
「何だと?」
「母親の教育が悪かったんだ。貴様を甘やかし過ぎたから、こんな人間になってしまった」
「黙れよ、クソジジイ!」