徒花
ついにはコウは、お父さんの胸ぐらを掴みに掛かった。
「きゃあ!」
「コウ、やめて!」
「お兄ちゃん!」
止める私たち。
コウはそれでもお父さんを殴りつけようと拳を振り上げた、刹那、その腕が運悪く弟くんの頬を打った。
ドン、と倒れる弟くん。
「マサ!」
はっとしたお父さんは、瞬間、パンッ、とコウを叩く。
「出て行け! 貴様の顔など見ていたくもないわ!」
コウは悔しそうに顔を覆う。
そして、茫然としていた私の腕を引き、「帰ろう」と言った。
早足で玄関に向かう私たちを、追ってくる弟のマサくん。
「お兄ちゃん! 待ってよ、ねぇ!」
コウは足を止めたが、振り向かない。
頬を真っ赤に腫らしたマサくんは、それでも涙混じりに、
「この前の誕生日プレゼント、ありがとう! ぼく、すごく嬉しかった! お兄ちゃんのこと好きだから! 帰ってきてくれたのも嬉しかった!」
「………」
「お兄ちゃんがぼくのこと嫌いでもいい! それでもぼくはお兄ちゃんの味方だよ! お願いだからそれだけは忘れないで!」
コウは私の腕を強く握る。
その手はやっぱり震えていて、
「行くぞ、マリア」
マサくんの言葉に何ひとつ答えることなく、コウはドアを閉めた。
「きゃあ!」
「コウ、やめて!」
「お兄ちゃん!」
止める私たち。
コウはそれでもお父さんを殴りつけようと拳を振り上げた、刹那、その腕が運悪く弟くんの頬を打った。
ドン、と倒れる弟くん。
「マサ!」
はっとしたお父さんは、瞬間、パンッ、とコウを叩く。
「出て行け! 貴様の顔など見ていたくもないわ!」
コウは悔しそうに顔を覆う。
そして、茫然としていた私の腕を引き、「帰ろう」と言った。
早足で玄関に向かう私たちを、追ってくる弟のマサくん。
「お兄ちゃん! 待ってよ、ねぇ!」
コウは足を止めたが、振り向かない。
頬を真っ赤に腫らしたマサくんは、それでも涙混じりに、
「この前の誕生日プレゼント、ありがとう! ぼく、すごく嬉しかった! お兄ちゃんのこと好きだから! 帰ってきてくれたのも嬉しかった!」
「………」
「お兄ちゃんがぼくのこと嫌いでもいい! それでもぼくはお兄ちゃんの味方だよ! お願いだからそれだけは忘れないで!」
コウは私の腕を強く握る。
その手はやっぱり震えていて、
「行くぞ、マリア」
マサくんの言葉に何ひとつ答えることなく、コウはドアを閉めた。