ハッピー☆ウエディング


たしか8階だったな…


あたしは802号室のベルを鳴らす。



『ピンポーン』




…………







あれ?




たしかに802号室の表札には【一ノ瀬】と書かれている。



でも、呼び出した先は無言のままだった。



「いないのかな…」



もう1度、丁寧にボタンを押してみる。


『ピンポーン』



『……………』
しばしの沈黙―――




『……はい』



物凄く不機嫌。



なんでえぇ!?




「あ……あの、あたし植草葵です」



あまりの不機嫌さに思わず緊張しちゃう。



『……』

「………」



なんで何も言ってくんないのぉ!?



あたしが固まっているとウィーンと扉が開いた。




あたしはおずおずと中に入った。

エレベータは8階まで上がっていく。



ドキドキ




【一ノ瀬】



ここだ……



ピンポーン



ゴクリ




あたしは扉の向こうの動きに集中する。

でもいつまでたっても人の動く気配はしなかった。



どうゆう事よ!?

あたしはドアノブに手をかけた。




…ガチャ




扉は鍵がかかってなくて簡単に開いた。



「……慶介?」




顔だけ中に突っ込み、様子を探る。




「おじゃましまぁす」


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