ハッピー☆ウエディング
あたしは再び、慶介に視線を戻す。
慶介は、イルカを目で追っているようだった。
「正確には、寝ている・・・らしいんだけど。」
へ? どういうこと?
あたしの顔をチラッと見ると、慶介は面白そうに言った。
「左右の脳を交互に休ませてるから、完全に眠ってしまうことはないんだ」
「そうなの?・・・じゃ寝てるところは見れないんだ」
あたしは、イルカを見た。
眠らないって・・・どういう感じなんだろう。
「見れない事もないよ。よく見てると片方の目をつぶってるヤツがいるはずだし。それが、イルカが寝てる証」
「へえ・・・そうなんだあ・・・でも・・・今はいないみたい」
あたしは気持ち良さそうに泳いでるイルカを順番に見た。
慶介って、すごい。
そんな事も知ってるんだ。
あたしは尊敬の眼差しで慶介を見つめた。
「そんな目でみるな」
そう言って、あたしの目を手で覆った。
まるで、照れてるみたいに・・・
なんだ、かわいいところもあるんだ。
神経質な人で、堅物と思っていただけになんだかその反応が、嬉しくてたまらなかった。
「待ってよぉ」
足早に次に進んで行く慶介を、あたしは急いで追いかけた。
ごはんを食べたあたしは、慶介と少し打ち解けてきた気がした。
沈黙が気まずくて、何かと話しを続けているあたしを、慶介は楽しそうにテーブルに頬杖をついて頷いてくれていた。
あたしが子供じみた質問をする度に、慶介はそれにしっかりと答えをくれる。
―――まるで、先生みたい……
・・・・って!!
それじゃダメじゃん。
いちよ、あたし達は婚約してるんだから。
あたしは隣に並んで歩く男の人を見上げた。
若く見えるって言っても、やっぱり大人の魅力が滲出てる。
その余裕の表情が笑ったり怒ったりする事があるんだろうか……
あたしに気付いた慶介は、視線を落とした。
反射的にあたしは、顔を背ける。
この人が、あたしの未来の旦那様?
・・・・・絶対、不釣り合いだよ。