ハッピー☆ウエディング
風間さんの背後に大きな影。
「私語は控えろ。仕事中だ」
あたしは思わず息を潜めて、雪絵さんの後ろに隠れた。
慶介・・・
なんか、怒ってます?
雪絵さんは、にっこり笑って慶介を見上げた。
「あら、旦那様の登場ね」
「?・・・だ、だんな?一ノ瀬センパイが?」
風間さんは、目を丸くしてあたしと慶介を交互に見ている。
慶介は、その言葉を無視して雪絵を睨んでこう続けた。
「雪絵さん、どうゆうつもりだ」
「なにが?いいじゃない。少しくらい案内してあげたら」
雪絵はあたしをズイッと慶介の前に押しやった。
目の前の慶介は首を少し傾けて、あたしを見下ろした。
「・・・・」
いつも見ていた慶介とは雰囲気が違う。
やっぱり会社だと、エリート商社マンの名前が似合う慶介だ。
あたしを甘く抱いた、あの日の慶介の面影はどこにも見当たらない。
ひえーーー!!!
あたし睨まれてるしッ!!
あたしは無関係だ~~!
そう言いたいのに、久しぶりに会った慶介に、あたしは何も言えなくなってしまった。
ただあたしを見つめる慶介から視線をそらさまいと、キュッと唇を噛締めた。