ハッピー☆ウエディング
「……ジュゴンって人間と同じくらいの知能があるって言われてるんだ」
「へ?」
やば………
あたし、また自分の世界に入り込んじゃってたんだ…
ボーッとしていて、変な受け答えをしてしまった。
なにを話してたか、全然聞いてなかった。
「俺達と同じ様に感情があるのに、こうして水槽に入れられて見せ物になってるのは、どんな気分なんだろうな…」
まるで独り言のように言う慶介の表情は、彼の頭1個分より小さなあたしからは読み取る事が出来なかった。
「葵、キスしようか」
「……………」
・・・え?
「えええッ!?」
驚いて、思わず慶介を見上げた。
そして、すぐ傍であたしを見下ろしている慶介と目が合う。
ひえぇぇ!
な、なに?
あたしは、そのまま慶介から目が離せなくなってしまった。
薄暗い空間で水槽からの光だけがあたしと、慶介の姿を映し出していた。
……………
慶介の手があたしの首に触れた。
ほとんど真下を向くようにあたしの唇にキスを落とした。
水色の幻想的な空間で
ジュゴンだけがあたし達を見つめていた――
初めてのキスは・・・甘い香水とほんの少し潮の香りがした。