ハッピー☆ウエディング
「送ってやれなくてごめんな」
「うんん。大丈夫だよ、今日は色んな慶介が見れてなんだか得した気分だしっ」
「?」
慶介を見上げてにっこり笑った。
慶介は、なんの事だかわからないといった様子だ。
あたしはその顔を見て、また笑った。
「それじゃあ、あたしはこれで…」
後ろ髪を引かれる思いでペコリと頭を下げた。
「ああ…」
慶介は何か言いたそうにあたしを見つめた。
そして、周りに一瞬視線を巡らせて、慶介はあたしの肩にそっと触れた。
そして次の瞬間―――
「・・・・」
唇に柔かな感触…
微かに触れただけのキス。
慶介は顔を離すと、目を見開いたままのあたしを見て、口の端をクイッと上げて笑った。
「気を付けて」
「☆×□△◇!!!」
ええええぇぇー!!!
ええええええぇぇー!!
声にならない声を出し、バッと両手で唇を覆って慶介の顔を見つめた。
慶介は、片手を上げてタクシーを呼ぶと慣れた手付きで、真っ赤になって固まっているあたしを車に乗せた。
慶介は後部座席を覗き込んだ。
「夜、電話する」
そう言って、あたしの頭をガシガシと乱暴に撫でると運転手に視線をずらした。
「行ってください」
タクシーはスムーズに動き出す。
口を開けたまま呆然としているあたしを乗せて―――
・・・ってぇ!!!!
今のはなんだ~~!!!
慶介は簡単にあたしの心をわし掴みにしてしまうんだ。
あたしは後ろを振り返った。
そこに、慶介の姿はなかった・・・