ハッピー☆ウエディング
「お客様~お降りの際は足元に注意してくださ~い」
不意に響いた声に顔を上げる。
見ると、すでにあたし達を乗せた観覧車は一周まわっていて、扉を開けたスタッフが不思議そうにこちらを眺めていた。
「あ!」
あたしは慌てて立ち上がる。
そのすぐ後ろで、慶介が続いてくるのがわかった。
観覧車を降りた慶介はいつもの『慶介』に戻っていた。
「そろそろ、帰るか」
「・・・う、うん」
あたしはその後ろをのそのそとついて行く。
長い足であたしの歩幅に合わせて歩く慶介を見上げた。
『・・・・本当にいいのか』
慶介の言葉と、その表情があたしの頭の中で繰り返し再生される。
なに?
どういうこと?
慶介は・・・・あたしの事好きなんだろうか。
慶介の背中を見つめて、あたしはその言葉を口に出せずにいた。
キラキラ輝く遊園地は、一気に雲に覆われていった。