ハッピー☆ウエディング
あたしは、自分の目の前に立ちはだかる人影に気づいて、顔を上げた。
「植草、葵さん?」
その人は、あたしの名前をはっきりと言った。
見上げるとそこに居たのは、別校の生徒だった。
色白で頭の高い位置で結われた長い黒髪。
前髪は、その切れ長の目を強調するように、綺麗に揃っていて風になびく。
ピンク色の形の良い唇は、キュッときつく結ばれている。
その顔に見覚えはまるでない。
「そう・・・ですけど?」
首を捻って、一応そう答える。
その子は、あたしをキッと睨むとこう言い放った。
「慶介と別れて!!!」
「は?」
突然の事に、あたしは小パニックを起こしてしまう。
きっと、頭の上には『?』マークが幾つも連なっているだろう。
この女!!!
何者ッ!?
あたしは得体の知れない少女を負けじと睨み返した。
これが、あたしと彼の妹の出会いになったわけだけど・・・・
あたしは、これから起こる事態をまるで想像できなかった。