ハッピー☆ウエディング
夜の闇に涙
ピリリリリ
携帯が大きな音をたててあたしを呼び出す。
不意をつかれたあたしは思わず体がビクンと跳ねた。
「もしもぉし」
「葵?」
受話器から聞こえたのは慶介の声だ。
玄関を開けるとスーツ姿の慶介が立っていた。
今日は日曜日だって言うのに仕事だった慶介は、ちょっぴり疲れて見えた。
あたしはその顔をじぃーっと見つめた。
「おつかれさま」
そう言ってにっこり笑ったあたしを見て、慶介の表情も和らいだ。
今日は慶介の家で一緒に夕食を作る事になっていて、あたしは数少ないレパートリーの中から、トマトソースのパスタを選んだ。
これなら、失敗する可能性が低い。
やっぱり、料理上手だなって思われたいもんね。
って言っても、きっとあたしの不器用さは、もうバレちゃってるんだろうな・・・・・・
あたしは、運転席の慶介を見上げて小さく息を吐いた。