ハッピー☆ウエディング

あたしが連れてこられたのは、小さなライブハウスだった。

大通りから狭い道を入った所の5階建の雑居ビル。
そこの地下にそのライブハウスはあった。


薄暗いフロアは少し湿気ていた。
せいぜい50人くらいしか収容できそうにない狭い室内の奥にステージらしきものもある。天井には、いくつかのライト。
一段高くなったステージには、スタンドマイクだけがまるで置き去りにされたかのように、ポツンと寂しくたたずんでいた。

こんなところで、ライブなんかあるのかな?


「なに?・・・・ココ」


あたしに背を向けてステージを見つめる瑛太に声をかけた。
瑛太は「ん?」と、あたしに顔を見た。


「俺の記念すべき、初ライブ場所。」


そう言って、瑛太は二カッと笑って言った。


「ライブ!?」


ビックリして思わず大きな声を出した。
その声は、何もない空間にやたらと響く。
その事に、驚いてあたしはとっさに口をつぐんだ。

瑛太は面白そうにあたしを眺めた。


だってライブって・・・・。


コイツ、そんなに本格的にやってたんだ。



「もうすぐなんだ。だから今日は下見」



そう言って、ステージに上がって機材をいじっている瑛太を見つめながらあたしは首を傾げた。



・・・・それとこれと、あたしはなんの関係があるのかな。



瑛太があたしを、ここへ連れてこられた意図がつかめない。







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