ハッピー☆ウエディング
あたしは無言のまま、慶介と絵梨ちゃんの後について歩いた。
さっきまでキラキラと輝いてみえた夕日が、目の前を歩く二人の影を長く長く伸ばしている。その影があたしの足をかすめるたびに、胸に刺さったままの棘がチクリと痛んだ。
慶介の部屋。
慶介の匂い。
全てが胸を焦がすのに、あたしは自分で自分に驚いた。
コーヒーがユラユラと湯気をたてている。
あたしの目の前には紅茶。
絵梨ちゃんの前にはコーヒー。
あたしだけ、違う。
バカみたい。
こんな事、どーでもいいじゃん。
スーツ姿の慶介は少しだけネクタイを緩めながら、コーヒーを口に運んだ。
あ、湯気でレンズが曇ってる。
そんなことを考えながら慶介を眺めてた。
昨日、あれだけ意気込んで慶介と話をしようなんて考えてたのに、今となってはちっとも言葉は浮かんでこない。
絵梨ちゃんと慶介とあたし。
すごく、変な組み合わせなのに、普通に三人でテーブル囲んでるし。
変なの。
なんとなく、他人事のような感覚のあたしを現実に引き戻したのは、他でもない慶介だった。