ハッピー☆ウエディング
その時――
「・・・・・」
車から降りようとしたあたしの腕を、慶介が遮った。
手を掴まれ、あたしの心臓は加速を始める。
重なったところから熱を帯びる。
慶介は大きく溜息をついてあたしの顔を覗き込んだ。
「なんでそんな顔してんの?」
「え?」
座席のシートに覆いかぶさるようにして、慶介は真っ直ぐにあたしを見る。
息がかかりそうな程、近くにある慶介のキレイな顔。
そう言いながらあたしの気持ちも全部見透かされているんだ。
わかっていて慶介はそう言ってる。
伏目がちの慶介の長い睫毛・・・・
形の良い唇・・・・
あたしは、もう息をするのも、瞬きをするのも忘れてた。
あと10cm・・・5cm・・・・あと・・・・・
そして、柔らかくて甘い感触――――
車のラジオから流れる甘い旋律より。
もっともっと。
あなたのキスはあたしをとろけさせる。
今までの気持ちを全部溶かしてしまう。