ハッピー☆ウエディング
・・・ええ?
そこにいた全員が、固まった。
だって突然その人は、両手を床について深々と頭を下げたから。
父が慌てて立ち上がって、その男性の肩を掴んだ。
「や・・・・やめてください!・・・・・社長!!!」
へ・・・?
しゃ・・・社長!?
ってか、この展開なに!?
あたし、まったくこの展開についていけないんですけど?
開いた口が塞がらず、ただ黙って目の前で繰り広げられている光景を眺めた。
社長って事は、この人が瑛太のお父さん・・・。
あたしは、父に肩を掴まれている男の人を見つめた。
体格はお世辞にもいいなんて言えないけど、確かに目元やハスキーな声が瑛太と似ている。
そんなふうにぼんやりとしていると、社長・・・瑛太のお父さんはあたしを見て言った。
「葵さん、今回の件・・・ほんとに瑛太が迷惑をかけて申し訳なかった。
それに、私も少し判断を早まってしまったようで・・・一ノ瀬君や、植草さんに多大なる迷惑をかけたことを心よりお詫び申し上げたい。
本当に、すまなかった」
「・・・・・」
「・・・・・」
そう言って、社長はまた頭を下げた。
なんて、腰の低い人なんだろう。
お父さんは、そんな社長の姿をただ黙って見つめていた。
慶介もただじっと自分の手元を見つめている。
あたしの知らないところで、何かが動いていた。