ハッピー☆ウエディング

社長は顔を上げると、


「これを・・・・」


と言った。

それを合図に後ろに座っていた男性が鞄の中から一枚の紙を差し出した。


机の上に置かれた紙に視線を落とす。



・・・・え?

こ、これって・・・。




あたしは、社長の顔を見上げた。





「瑛太が見つかった以上、迷惑をかけた分、あいつにはしっかり責任をとってもらうつもりです。
葵さんにも、なんと言っていいか・・・・。
急に、こんな事になり戸惑っていたのは慶介から聞いていた。
これで普通の高校生活に戻っても大丈夫だ」



「・・・・・あの?」



頭の悪いあたしには、社長の言ってることがいまいち理解できない。




あたしは、机の上に置かれた紙に手を伸ばしながら言った。



「これって・・・・婚姻届・・・ですよね?・・・・でも、どうして・・・」




声が震えているのがわかる。


口の中の水分が全部飛んでいってしまって、やけに粘々してくる。





社長はにっこり笑って言った。















「婚約解消だよ」









その瞬間――――




あたしはどうやって息をしたんだろう・・・


どうやって瞬きしたんだろう・・・



フリーズしていく思考回路。



でも、社長の言葉だけが何度も何度も反芻していた。





“婚約解消”




慶介との・・・・婚約・・・解消?




< 269 / 337 >

この作品をシェア

pagetop