ハッピー☆ウエディング
恋が散る



ハァ・・・ハァ・・・・・・



「ハァ・・・ふぅ」



あたしは大きく深呼吸をして乱れた息を整えた。

激しく上下していた胸を両手でギュッと押さえた。





そして、息を飲み込むとゆっくりとその敷地に足を踏み入れた。











そこは、町外れの小さな教会だった。

小高い丘の上にあってそこからは、町が一望できた。

綺麗に剪定されたイングリッシュガーデンに囲まれて、茶色の尖がった屋根だけが突き出して見える。

その屋根のてっぺんには、金色に輝く十字架が遠慮がちにくっついていた。


クリスマスイルミネーションで、小さな電球がチカチカと入り口付近を彩っている。

すごく静かで、神聖な雰囲気さえ感じられた。


あまりに静か過ぎて、その中に人のいる気配は感じないけど、地面に薄っすらと積もった雪が、誰かがそこを通った事を教えてくれていた。


ドキドキする胸を押さえながら、あたしはその足跡の上を踏んで歩く。


あたしよりも大きな足跡。



それが慶介の物である事を祈りながら、あたしは木で出きた両開きの扉に手をかけた。


鉄で出きたドアノブを掴むと、刺すような冷たさが手を襲った。







ギギギ―――



重たい音とともにゆっくりと扉を開けて、あたしは中に顔を突っ込んだ。





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