ハッピー☆ウエディング


キャンドルライトだけで照らされた薄暗い教会の中は、思いのほか暖かかった。

赤絨毯が真っ直ぐに伸びており、その両脇には木でできた長椅子が10列程並んでいる。

その先には小さな神代があって、そこにはイエス・キリストが十字架と共に壁にかけられていた。

キリストの真上には天井まである大きなステンドガラスが輝いている。




「きれい・・・」




あたしはそのステンドガラスを見上げながら扉を閉めた。




自分の住んでる街に、こんな教会があったなんて。



ここにいると、不思議と自分が中世のヨーロッパにタイムスリップしたような、そんな気分にさせられた。






・・・・・・・・。





そして、あたしはゆっくりと視線を落としていく。

オレンジ色の暖かな光に包まれた神代前の椅子に、誰かがいる事に気がついた。


彼はあたしの存在に気づいてこちらに体をひねった。
そして見るからに驚いた様子の彼は、椅子からゆるゆると立ち上がった。






「・・・・・・葵?」





そう言った彼にあたしはさらに歩み寄った。
はっきりしなかったシルエットが暗闇からだんだん浮かび上がってきた。





やっと見つけた。




「慶介・・・・」




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