ハッピー☆ウエディング


中身を見て言葉をなくしてるあたしの手に慶介はそっと触れた。



「・・・・・・」


「・・・ここで、もう一度葵に会えたら・・・言おうと思ってた」



そう言って、慶介は愛おしそうに目を細めると、あたしの左の薬指にダイヤの指輪をはめた。




政略結婚なんてありえないって思いながら、だんだん慶介に惹かれていった・・・。



まるであたり前のように、あたしの心を奪ってしまう慶介・・・・。


いつからか、ずっと肌身離さず身に付けていた



エンゲージリング。







でも、そんな大事な指輪も慶介との婚約破棄が決まった翌日、お父さんに返したんだ。




見るのも辛くて、苦しくて、慶介から逃げた証・・・・。





あたしは、左の薬指を見つめたまま、息をするのも忘れてしまっていた。




< 316 / 337 >

この作品をシェア

pagetop