ハッピー☆ウエディング
暫くしてバスは、古びた小さな建物も駐車場に滑り込んだ。
竹林に囲まれた隠れ家的な宿。
古びた感じもするが、それは洗礼されていて「老舗」と言う表現が1番しっくりくるだろう。
きっと、常連客で成り立っている旅館だと思う。
バスから降りると、森林の澄んだ空気があたしを包み込んだ。
それと同時に、違和感を感じた。
「・・・・静か・・・」
辺りは静寂に包まれていて、蝉の鳴き声も聞こえてこない。
真夏だというのに、ここだけが別世界のようにひんやりとした風が頬を撫でる。
あたしは、今夜自分達が泊まる旅館を眺めた。
3階建だけどこじんまりしてるな。
築何年だろ………
そんな事を考えながら、ふと3階の窓を見た。
そこに、あたしの視線は釘付けになった。
ん?
誰か、こっち見てる?
よく見えない。
窓際に誰かがこちらを眺めている。
あたしは両手で目をグリグリとこすって、もう1度視線を3階に戻す。
ぼやけた視界が、次第に鮮明さを取り戻す。
「・・・・・」
あれ?
あれれ??
ぎゃあああッ
いなくなってるぅぅー!?