ハッピー☆ウエディング
「おお・・・おか・・・お母さんッッ!!!」
あたしは母の袖をグイッと引っ張った。
「なぁに、葵。驚かさないでよ。それにしてもステキな所ね」
「う…うん」
あたしの動揺とは裏腹に母の呑気な言葉に、思わず勢いをなくしたあたしはそのまま言葉をゴクンと飲み込んだ。
にっこり笑う母の顔を見たら、あたしは何も言えなくなってしまった。
せっかく、楽しみにしてるのにわざわざその気分を盛り下げる事もない。
「温泉楽しみねぇ」
そう言って、さっさと旅館の中に入って行ってしまった。
「・・・・」
取り残されたあたしは、恐る恐る、あの窓を見た。
見間違いだったかな…
あたしは気をとりなおして母の後を急いで追った。
会社は家族一部屋とってくれてあり、窓の外には綺麗な川が流れていた。
約10畳の部屋には長方形の木目の机と4つの座椅子が置かれている。
その上にはお茶菓子なんか用意されており、宿の配慮が感じられた。
「ふーん、結構いいじゃん」
亮が窓際に座り部屋を眺めて、外の景色を見た。
「夕食は6時からだって。まだ少し時間あるわね…葵、先にお風呂入ろうか?」
母が時計を見ながら言った。
「うーん…そうしよっかな」
あたしは母と浴衣を持って浴室に向かった。