ハッピー☆ウエディング
「初めまして・・・と言うべきかな。
名前は一ノ瀬慶介。年は26歳」
彼はそう言ってあたしの手をとった。
不意打ちに触れた大きくて、とても温かい手に思わず胸がドキリと波打つ。
そして、彼は伏目がちの瞳であたしを捕らえると、こう言った。
「植草 葵さん、僕と結婚して欲しい」
迷わず言った彼は、あたしの左の薬指にキラキラ煌めくダイヤの指輪をそっとはめた。
「…………」
その指輪は、あたしの小さな手にしっくりとはまった。
まるで、最初からそう決まっていたように。
家族が見守る中、あたしは初めて会った男の人にプロポーズをされてしまった。
一ノ瀬慶介はあたしの手をしっかり握って、真っ直ぐと前を見据えている。
あたしも彼から視線がそらせない。
よく見ると神経質そうに見えていたその顔立ちはとても綺麗で、鼻筋もスッと通っている。血色の良い薄い唇は、キュッと閉じられていた。
艶のあるその黒髪は、しっかりとセットされている。
「……」
あたし
おかしいのかな………
この人をもっと知りたいって思っちゃう。
「……はい。」
真剣な瞳に、飲み込まれそなのになりながら、あたしはそう答えていた。